実用新案権者の責任

今日のテーマは、実用新案権者の責任です。

実用新案技術評価書で肯定的な評価を得ただけでは十分とは言えません。
そこで、技術評価書に加えて、どのようなことに注意すべきかを説明していきます。

登場人物
僕:広島弁を操る主人公
客:村の発明家
悪:実用新案権の侵害者

<作り話>
客:おい、お前。
悪:なんだ、また来たのか?
客:お前を今度こそやっつけてやるぞ。
悪:技術評価書は持ってきたんだろうな。
客:みろ!肯定的な技術評価書だ。もしお前がここで実施行為をやめないなら、裁判にかけるぞ。
悪:く、本当に肯定的な技術評価書を持ってくるとはな。
客:今なら、実施料相当額で勘弁してやるぞ。
悪:ふふふ。実はこの考案は、アメリカで実施されているのを見たことあってね。
客:なんだと。何が言いたいんだ?
悪:技術評価書の調査対象外の無効理由があると言ってるのさ。
客:調査対象外!?そんなことは初めて聞いたぞ。
悪:実用新案技術評価書はな、公知文献による新規性及びそれによる創作非容易性、拡大先願、先願くらいしか評価しないんだよ。だから、実施行為に関してはノーチェックなのさ。
客:な、なんだってー!
悪:裁判にかけてもいいが、こちらは無効審判を請求して無効になった後、実用新案法29条の3に基づいた損害賠償を請求させてもらうぞ。
客:これでは返り討ちじゃないか。
悪:そういうことだな。
僕:ちょい待ちんさい。わしがもう全部チェック済みじゃけん。アメリカで実施されとるんは、これか?
悪:ああ、そうだ。
僕:これ、本気で同じじゃゆうとんか?
悪:あ、ああそうだ。
僕:これ、見た目似とるけど全然ちがうで。アメリカのは手動じゃが、こっちは電動じゃ。しかも用途も違うけんの。それでも同じ言い張るんか?
悪:さ、裁判になったらな。
僕:わしが実用新案法29条の3を知らん思うとったんか?ちゃんと調査済みよ。他の先生にも頼んで調べてもろうたわ。ホレ。
客:おお。鑑定書だ。
僕:裁判やるんなら、わしは弁護士じゃないけん、代理人にはなれん。ほいじゃけえ弁護士紹介するけど、どうするん?
客:もうやらないんなら、実施料相当額で勘弁してやるぞ。もちろん契約書は交わしてもらうがな。
僕:わしがドラフト書くわ。
悪:ぐぬぬ。わかった。降参だ。実施料相当額の支払いと、今後のライセンスについて話をしよう。
客:よし、決着がついたぜ。サンキュー。

こうして、侵害を認めた悪は、客に対してこれまでの利用料を支払い、通常実施権の許諾実施契約を締結しました。
客は、権利満了まで有効に権利活用したのでした。
めでたし、めでたし。

今回のお話で出てきた、実用新案法29条の3には、実用新案権者の責任について規定されています。
実用新案権は、実体審査なく登録されます。そのため、実用新案技術評価書がなければ権利行使できないことは以前説明しました。
しかし、この実用新案技術評価書の調査範囲は限られています。
そのため、もしも調査範囲外から無効理由が見つかった場合、実用新案権者が相当の注意を尽くしたことを説明する必要があります。
具体的には弁理士の鑑定を得たりするなどします。
もしも、相当の注意を尽くしていないと判断された場合、実用新案権者は、権利行使をした相手に対して、損害賠償を支払うことが規定されています。

実用新案技術評価書だけでは完璧ではないと覚えていてください。

 

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