商標権侵害における損害賠償額の推定

元弁理士による大量の商標登録出願問題について、元弁理士が「使用すれば損害賠償請求」と、インタビューに答えている画像を見た。
実際に侵害かどうか?という点は、棚上げしておき、実際に損害賠償請求したら幾らくらいか?という点を考えてみたい。

損害賠償請求とは、文字どおり、発生した損害を請求することだ。
見方を変えると、損害が発生していない場合、請求できないとも言える。
商標の世界における損害についてざっくりいうと、こんな感じだ。
「本当なら10個売れる予定だったのだけど、商標を勝手に使われたお陰で5個しか売れなかった。だから、5個分の利益を失ってしまった」だ。
売れなかった5個はどこに行ったのか?それは、勝手に使った側が5個売ってしまったのだ。
そうであれば、損害額は以下の金額であると主張できる。
 損害額=1個あたりの利益✖️5

しかし、実際のビジネスの場面では、相手が本当に5個売ったことを立証することはかなり難しい。
このような事態を救済するため、商標法では損害額の推定規定を用意している。
侵害者が商標権を使って、何個売ったか分からないけれど、100万円の利益を上げているようだ。
だったら、商標権者の受けている損害額は100万円と推定してもいいんじゃないか?という規定だ。
こちらの方が幾分か立証は容易となるだろう。

しかし、いずれの場合も商標権者が主張及び立証をしなければならない点では大変だ。
上記二つの規定で立証できない場合、最後の砦となる規定がある。
利益はいくらかわかってないけど、商標権を使ったなら実施料相当額の損害は明らかに発生しているだろう。というものだ。
実施料相当額とは、言い換えると、商標権をライセンスした場合のライセンス費用相当額だ。
相当額と書いているのは、「ライセンス費用」と言い切ってしまうと、バレてからライセンス費用を払えば良い。というやったもん勝ち状態になってしまうからだ。
ライセンス費用相当額であれば、侵害者に利益があろうとなかろうと、商標権者に損害が発生していると考えて差し支えない。

では、ライセンス費用相当額とはいくらなのか?
これは、ケースバイケースだ。平成21年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書によると、諸々の制約条件の下では販売高の2.6%が平均のライセンス費らしい。
これを鑑みると、ライセンス費用相当額は、少なくとも3%以上と考えられるだろう。
平成21年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 57頁参照
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/zaisanken/2009_06.pdf

では、元弁理士は侵害者に対していくらの損害賠償額を請求できるのか?
重要な事実として、元弁理士は商標を使っていない。
そのため、元弁理士が商標を使うことで得られたであろう利益はそもそも存在しない。
そのため、最初と2番目に述べた損害額の推定規定を使うことはできない。
必然的に、ライセンス費用相当額になる。
仮にライセンス費用相当額が5%だとする。
侵害者が1000万円売上げたとしたら、ライセンス費用相当額は50万円になる。
これで果たして利益が出るのか?

商標の出願費用は以下の通り。単純化のために指定商品は1区分とする。
元弁理士であることを鑑みて、弁理士費用は除いている。
 出願費用 12,000円
 登録料  28,200円
 合計   40,200円
利益率90%超え。。。知財ビジネスすげー。
ただ、知財ビジネスとは両者の合意のもとで行われるべきであり、元弁理士がやるような脅迫まがいのことが良いはずがない。

昨日からの繰り返しになるけれど、特許庁は通達を出しています。
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/tanin_shutsugan.htm

元とはいえ、知財の専門家たる弁理士が、弱者から搾取するような行為は恥ずべき行為だと考えます。

このような問題、ご相談受け付けております。上記の「問合せ先」からご連絡いただければ、回答させて頂きます。
また、商標大量出願の問題については、4/16に開催予定のセミナーで直接紹介していきたいと考えています。
この日は、対面での相談も実施予定であり、直接ご相談をいただくことも可能です。

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